診療紹介

前立腺癌について

前立腺に発生する癌で、食生活の欧米化により近年我が国で増加している悪性腫瘍です。前立腺肥大症と癌は関係のない別の疾患と考えられています。初期では全く自覚症状がなく、進行がゆっくりで、高齢男性に見つかりやすい特徴があります。経直腸的超音波検査や血液中のPSAを測定し、癌が疑われる場合は経直腸的に前立腺針生検を行うことにより診断出来ます。転移の有無はCT(MRI)検査、骨シンチグラフィーで評価します。治療法の選択に重要な因子は、生検組織のグリーソンスコア、臨床病期、PSA値です。治療は初期の癌では手術(前立腺全摘術)や放射線治療などの根治的治療がまず適応になります。進行期では内分泌治療(ホルモン治療)が有効で、多くの場合は長期に病勢をコントロールする事が可能です。

  1. 前立腺全摘術
  2. 前立腺と精嚢腺を全摘出し膀胱と尿道をつなぎ合わせる手術で、開腹手術、腹腔鏡手術があり、最近はロボット手術も保険適応され普及しつつあります。手術に伴う合併症は尿失禁と勃起障害です。尿失禁は最近の手術手技の確立によりかなり減少しています。

  3. 放射線治療
  4. 前立腺に放射線を照射する治療で2種類あります。1つは体外から照射する方法で外照射といい、近年は治療効果を高めて周囲臓器への放射線被曝を減らす目的で、3次元原体照射や強度変調放射線治療(IMRT)などの装置が導入されつつあります。もう1つが内照射で、小線源を前立腺組織内に埋め込み内部から治療する方法(小線源療法)で前立腺に限局した癌に対して行われ、外照射と併用される事もあります。

  5. 内分泌治療
  6. 前立腺癌は精巣と副腎で分泌される男性ホルモンの作用で増殖する特徴があり、癌に男性ホルモンが入らないようにする治療法が内分泌治療です。比較的進行した病期や放射線治療との併用として、または高齢の方に行われます。1ヶ月あるいは3ヶ月おきの皮下注射と抗アンドロゲン剤の内服の両方を行うのが一般的です。他の抗癌剤のような副作用はありませんが、勃起障害・ほてり・発汗・骨粗鬆症・メタボリック症候群などがみられます。

  7. 抗癌化学療法
  8. 内分泌治療が有効でなくなったときに行う治療でドセタキセルなどの薬剤が使われます。

 

前立腺癌の治療は選択肢が多く、癌の悪性度や進行の度合い、身体の状況、基礎疾患の有無などにより治療法が大きく異なります。信頼の置ける医師と相談の上、治療による合併症や副作用を理解した上で自分のライフスタイルにあった治療法を選択することが大事であると考えます。